自分語り#643 「人それぞれのカンブリア大爆発」(1175文字)

f:id:technorch:20190322011214j:plain

  私はリアルタイムに音楽を聴いていた訳でもないのに1991-1993の3年間であまりにもHardcore Technoが激的に変化したので、この時期を「カンブリア大爆発」だと思っており、電子音楽はこれ以降、この規模の激的な変化をしていないと思っている時期がありました。

  最近REDBULL MUSICのDubstepについての記事で「200*〜200*の間は毎日新しい音楽が生み出される実に刺激的な時期だった」と書いてありました。確かに一番最初の頃にDubstepと言われ始めた音楽の印象と、フェスティバルミュージックになってWobble Bassがブリンブリンなっている音楽との間には、外野の私が聴いていても同じ名前で呼ぶのが憚れる程の激的な変化を感じます。この記者のDubstepのこの数年間に関する興奮した語感は私がHardcore Technoに感じるカンブリア大爆発と同じような喜びに溢れていました。

  多分きっとこういうことなんだろうと思います。Jazzが誕生した時、Funkが誕生した時、ギターがエレキギターになった時、シンセサイザーがPopsに導入され始めた時、それが4つ打ちDiscoになった時、Chicago House/Detroit Techno型の909/808/303スタンダードが誕生した時、私が考える1991〜93年にHardcore Technoが激的な変化を起こした時、The Prodigy/The Chemical Brothers/Underworldらの登場でダンスミュージックがRockと融合した時、メインストリームダンスミュージックがDrum'N'Bass化した時、Dubstepが現在のDubstepへと変化した時、皆が皆「これ以上音楽が爆発的な変化を起こした時期はないな」とそれぞれのカンブリア大爆発を持っているのかもしれません。

  UK Hardcoreも私がその名前で知っていた頃と現在では同じ名前で呼ぶことが憚られるほどの激的な変化を起こしています。Hardtek Tribeがフェスティバルミュージックと合体することをその世界の何割のファンが予想していたのでしょう。今私が20ぐらいだったらメインストリームのフェスティバルミュージックに「カンブリア大爆発だ!」という喜びを感じていたのかもしれません。

  90年代にRAVEで遊び回っていたオランダ人とお話をした時、彼は「GabberがHappy Hardcoreに変化してHardcore TechnoがPopsと区別出来なくなったことの凄まじさ」を熱く語ってくれました。間違いなく彼のカンブリア大爆発は94-95年にあるのでしょう。人生は一回しかなくて勿体無いし、だからこそ面白いのかもしれまないなぁと思いました。人それぞれのカンブリア大爆発。