東京堂書店『美学校1969-2019』刊行記念フェア にて選書10冊を担当致しました。当時の選書全冊と解説を掲載致します。

※以下は東京堂書店様に写真掲載の許可を頂きました。

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名前の並びが恐れ多すぎる

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DJ TECHNORCH 選書コーナー

 2019年8月に美学校本 刊行記念フェアとして特設コーナーを作って頂きました中で、選書10冊をDJ TECHNORCHが担当させて頂きました。「アートを知る選書」として非常に浮いた選書になることが予想されましたので「担当様への注意書き」を添えておりましたが、東京堂書店担当様に面白がって頂きそこのコメントまでほぼ全文掲載して頂いたり、なんともありがたい限りでした。

 

十分に時間が経過致しましたので当時の選書全冊と解説全文を掲載致します。

 

以下全冊読んだ方はもはや私の「金野火織の金色提言」「内閣総理大臣賞」「少女IN」「全部僕が悪い」等の私の楽曲は聴く必要がないものと思っております。そのぐらいダイレクトに影響を受けた10冊です。

 

選書全十冊

※担当者様へ:お世話になります。DJ TECHNORCHと申します。以下の選書は、創作を継続するにはどのような理論的な技術ノウハウ本よりも、遥かに「『好き』のモチベーションの維持継続・根拠のない自信とその実行・その結果から初めて自覚できる好きなものと売れるものの違い・そこから考え直す自分にとっての才能の自覚・自己実現と自己承認の重なり合いとそこへの折り合い・私の『好き』とは結局なんなのか・『好き』は私を今幸せにしているのか」という部分が重要であるという基準で選ばれています。その為、「アート、音楽を学ぶ・知る」というテーマでありながら、ライトノベル・格闘ゲームプロゲーマー・将棋名人・小説家対談集・漫画・一般文芸・ロボットコミュニケーターという一見アートと無関係な著者が並び、最後に辛うじて2冊だけ直接的な音楽本を紹介してあるという形になりました。他の執筆者様のアート・音楽選書と並べた際に極めて異形になるかもしれませんが、本人は本気で「あらゆる作曲ノウハウ本よりも遥かに専業作曲生活に直接的に役立った」書籍だけをセレクトしています。結果、フェアの内容と噛み合わなくなってしまいましたら申し訳ございません。また、コメント字数が多く、紙面・店頭面積の問題が生じる場合は担当者様のご判断で遠慮なく省略・削除をお願い致します。その際の確認は必要ございません。

 

 

作曲少女~平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話~

作曲少女~平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話~

 

 

「ハッキリ言うと、努力してる時点で向いてないってことなんだ (P77)」

 

私達は「大好きな」はずの作曲を勉強する事がどうしてこんなに「辛い」のだろうか?私達は本当に作曲が「好き」だと言えるのだろうか?あなたには「努力を努力と思わない天才」「私が散々苦労したフレーズを目の前で5秒で耳コピする友人」に嫉妬した経験はないだろうか?「あの人」と「私」の間に聳え立つこの、気が狂いそうな程の圧倒的な壁。あの劣情と情動を音楽理論書で伝えるのは非常に難しく、本書は正にその為の「作曲ライトノベル」なのだと言える。ドミナントモーションがなんだという理論的な言葉は使われないが、本書はその圧倒的な壁を前に「天才ではない私が挫けずに作曲を完遂するノウハウ」を物語という形式でなければ伝えられない方法できちんと伝授してくれる。

 

 

作詞少女~詞をなめてた私が知った8つの技術と勇気の話~

作詞少女~詞をなめてた私が知った8つの技術と勇気の話~

 

 

「絵を描くのは難しいだろ。でも、カメラはシャッターひとつで撮れる。どっちの方が難しいと思う? (P34)」


「創作が恥ずかしいのは、『自分らしい』からだ。逆に言うと、自分らしくないものを人に見られるのはまったく恥ずかしくない。だってそれは『借り物』だからな (P186)」

 

絵画と作曲は、作品それ自体を完成させる事が未経験の人間には大変難しく、それをなんとか挫けずに完遂させるのが前著「作曲少女」だ。対して写真と歌詞は完遂することだけならとても簡単に見えるが、本気の自撮り、そして「ポエム」と世間に揶揄されるそれがどれほどに「恥ずかしい」ものかはあなたもご存知のはず。では何故それらはこれ程まで「恥ずかしい」のか?それは「自分らしい」からだ。別に一生「借り物」を使っても構わないよ?だっておまえは「恥ずかしい」のは嫌なんだもんな?作詞ライトノベル。

 

 

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

 

 

「いかに『手を読むか』から、いかに『手を読まないか』に。 (P32)」

 

いかなる天才ともいえども新進気鋭の若手の棋譜の暗記力・情報吸収力にベテランは敵わない。ではベテランが持つ若手にはない力とは何か。それは「大局観」である。情報は「選ぶ」のではなく「いかに捨てるか」にかかっている。インターネットは将棋の世界を始め、あらゆる勝負事と創作の世界を変えた。日々最前線の棋譜がネットで参照でき「最低限このテクニックを知らなければ勝負にすらならない」情報が毎日洪水のように溢れ、そして来年にはその情報は使えなくなっている。創作作品はデイリー・ランキング化され、人気度は正確に数値化され、隣のフォロワーが数万RTのバズを叩き出す中、皆がやっていることと違う方法で「私がやっていることは正しい」という自信を持つことは現代では至難の業かもしれない。ネット将棋が始まる前、棋士達は「こんな局面現代では絶対にありえないよね」という江戸時代の詰将棋を徹底的に師匠に叩き込まされた。即戦力のノウハウが毎日飛び込む今の若手には、こんな「無駄」に使うような時間は残されていないのだ。そんな若手を、羽生善治氏はある意味で可愛そうだと言う、そう、「無駄こそ幅」なのに。これは本当に将棋の世界でしか通用しない話だろうか?私達作曲家には身に覚えがある。

  

1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀

1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀

 

 

「恥ずかしいですね。だって、褒められない。やるとむしろ怒られるもので世界一になって、『すごいね 世界一なんだ』って周りに言われて、うれしい気持ちにならなくないですか?普通。 (NHK プロフェッショナル・仕事の流儀 TVインタビュー 2018年)」


「目的が『優勝』になると、優勝した時点でその人は急激に弱くなる (P171)」

 

日本初のプロゲーマーであり「世界でもっとも長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」「最も視聴されたビデオゲームの試合」ギネス世界記録保持者。正に「好き」を仕事に成した彼が、「好き」を「好き」でいられる為に培ったモチベーション継続方法は「一日ひとつだけ、成長をメモする」ことだった。大切なことは、決して成長達成数を増やしたり、成長内容のハードルを上げたりしてはいけないということ、むしろどれだけハードルを下げられるかがモチベーションの鍵なのだ。

 

「1日ひとつだけ、成長をメモする (P167)」


「今の僕は少しばかり変人じみてきていて『よし、これだけハードルを下げられた』といったような感覚まで持つようになっている。頑張っている意識を持てないくらいの低いハードルがある意味で理想的だ。出かけるときに戸締まりするだとか、そういうレベルまでハードルを下げても、成長を感じられるぐらいがいい。ここまで来るともはや他人にはほとんど分からない楽しみといった感がある。それは自分にしか分からない小さな成果だが、やり方次第で十分、日々の支えになるものだ。 (P180)」

 

 

西尾維新対談集 本題 (講談社文庫)

西尾維新対談集 本題 (講談社文庫)

 

 

「才能とは何かを考えると『他のことができなくなるもの』でもあるだろうし、『他のことができないからそれに専念するしかできなくなってしまうもの』でもあって、『できない』の集大成が結果として才能として特化されていくんじゃないかとは思ったりもします。 (P134 羽海野チカ)」


「そして、一万時間やったら、もうやめられなくなるんですよね。あとに引けなくなる。一万時間やったら二万時間やるしかないみたいになってくる。最終的には『倒れるまでやるしかない』となるのをうっすら知っている僕としては、十代の若い人に『とにかく一時間でも多く練習すればいい』とは言いづらいところもあるんですよね。 (P138 西尾維新)」

 

才能って他のことが出来なくなる欠点じゃないですか。だからあなた、才能がなくてよかったですね。あのね、一万時間練習した後にこの道に向いてないと気がついても、もう次の二万時間練習するしかないんですよ。才能は呪いです。でもあなたは練習する前に気がついて良かったですね、才能がなくて。

 

 

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)

 

 

 

「振波は……なんでゲームに熱くなれるんだ?
何か見返りがあるわけじゃないし
誰かがホメてくれるわけじゃない
意味の無いことってむなしくならないか? (P197)」

 

「俺の心が豊かになるだろう
好きなもんは好きなんだよ!!!
意味ばっか求めてんじゃねーよ!!!! (P198-199)」

 

※上記著者ツイートにて無料公開されているFLIP-FLAPは読み切り一話完結編で単行本ではこれを元にした長編が収録されております。

 

 

ほんたにちゃん (本人本 3)

ほんたにちゃん (本人本 3)

 

 私は!!特別な人間なんだ!!おまえには自己実現と承認欲求の区別がつくのか!?それはおまえが「特別」だからか!?!?

 

なんらかの自己表現をしたことある人間が「ほんたにちゃん」のような経験をその片鱗すら触れずに過ごすことって可能なのだろうか? 創作が恥ずかしいのは、『自分らしい』からだ。「ほんたにちゃん」が恥ずかしいのは、究極的に『ありがち』でかつ『自分らしい』からだ。そしてそれは両立する。

 

 

「孤独」は消せる。

「孤独」は消せる。

 

 「好き」は人間を救う。ロボットコミュニケーター吉藤オリィを孤独から救った「好き」という歴史。

 

(※DJ TECHNORCH オールジャンル生涯BEST書籍 TOP10)

 

 

そして、みんなクレイジーになっていく―DJは世界のエンターテインメントを支配する神になった

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テクノのススメ

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