自分語り#652 【大木亜希子 / アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア】★★★★★ (1820文字)

 

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アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア

アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア

 

 

フリーランス・ステージアクト・クリエイター・その他ありとあらゆる専門職が色々と不安に思う「**をやめたあとのセカンドキャリア」について、元48グループで現在ライター大木亜希子氏が同「元48グループ」の方々へ様々な「やめた後のセカンドキャリア」をインタビューした本。

げに恐ろしきは彼女達のタフネフとバイタリティ、そしてメンタル的に潰れた・潰れかけた際の総じての驚異的な回復力(恐らくここが最重要)には驚くばかりです。中には実際に身体を壊してしまいドクターストップがかかりそれが人生を左右される決定を選ばざるを得なくなってしまった方もいるのですが、その後の活動も決して止まることのない「どうしてそこまで出来るの」という驚愕の活動力に恐れ入りました。

私はアイドルの世界に明るくないのでインタビューされている女性陣が一人一人がアイドル業界においてどのぐらいのポジションに居た人達なのかをよく掴めていないのですが「なんだか分からないうちにとんとん拍子に正規メンバーとして活躍していくようになった人の卒業」から「オーディションには合格したものの結局一度も正規メンバーにはなれなかった人」や更には「AKBカフェっ子だったのだけれど結局一度もオーディションに合格していない人」まで幅広くインタビューされているのが大変興味深かったです。

特に印象的なのはインタビュー第1ページ目は必ず「元***48で現在職業***の***さん」という大きな写真で始まるのですが、皆が皆一様に各々の「職業***」らしい目つきに成っていることにとても驚きました。ただ一人「え?この人はまだ現役ステージアクトに見えるんだけど?」と思う方がいらっしゃると、その方の現在の職業が「声優」だったりして実に深く納得します。とにかく人によって職業***として一人前であるかはさておき(中には就活がただ内定済みでインタビュー段階ではまだ大学生の方もいる、でもそれがまた実に「それらしい」顔つきをしているのですね)、皆さんが持ち前のタフネフ・バイタリティそして回復力(←もう一度言いますが、もしかしてここが一番重要かもしれない!)を持ってそれぞれ「職業***」らしい顔つきになっていることにとても驚きました。

読み始める寸前までよく分かっていなかったのですが、考えてみればアイドルというお仕事のセカンドキャリアはとても特殊ですね。最も中心的なアイドル本職の活動期間が中・高(遅くとも大)学生の就学時期に集中しているわけです。「元***」としてセカンドキャリアを歩む時に一般的な新卒の年齢に達していないことも往々に有り、これは随分他のセカンドキャリアとは違うなと思いましたが、そうはいってもフリーランス系は皆それぞれの「職業***に特有の事情」を抱えているのでよく考えてみればそりゃそうかと思いました。そしてこのインタビュー本が素晴らしいのは完全に「新卒」という年齢を過ぎてからのセカンドキャリアの方まで網羅していること。そしてどの方も一言「頑張った」ではとても済まない経歴が書いてあります。

私はインタビューされている元アイドルの方々について名前を知っているわけでもなく、現在のアイドルの業界事情も分かっていない人間なので、かなり大雑把な感想になってしまうのですが「さすが誰もが知っているメジャーなアイドルグループのオーディションを通過する女性達は、間違いなく何かしらの面で非常に優秀である」と感じました。

一番新鮮だったのは菅なな子氏が「元アイドル」となり難関受験勉強に振り切った時、

勉強は、自分が頑張った分だけ学力が上がって点数が獲得できる、っていう事実がシンプルで、自分にとっては救いでした。アイドルって顔が可愛ければ売れるわけじゃないし、活動していくなかでも『こんなに自分がかなわない人たちがいるんだな』っていう敗北感の連続で。自分に歌やダンスの武器があっても、それで人気が上がるわけでもなかったので、勉強の世界が新鮮に感じて

と感想を述べていることでした。これ、逆の体験をするのが普通じゃないでしょうか?突き抜ける(そしてその突き抜け方はちょっと尋常じゃない)経験としてのアイドルという「キャリア」は、かなり強烈な経験なのだなと感じました。