自分語り#656 定額制サービス、足りないのはお金から時間へ (5242文字)

 

 

 「山本七平 / 私の中の日本軍」を読んだ

 激ヤバ鬼マスト★★★★★ (三作共に)

 先週「空気の研究」(1977年)で有名な山本七平の「私の中の日本軍」を読みました。「空気の研究」はいつ読んだんでしょう。確か何年か前だったと思いますが、日本軍のあの行動原理は「空気」と「建前」にあるという研究でした。中根千枝の「タテ社会の人間関係」(1967年)もそうですが

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

  • 作者:中根 千枝
  • 発売日: 1967/02/16
  • メディア: 新書
 

 昭和の「タテ社会」から一・二世代分は時間が進み、戦中の「空気」に至っては二・三世代分は時間が進んでいるはずなのに、この2020年の緊急事態をもって少なくともこの「空気」「建前」「タテ社会」の三つをもって本当にほんの少ししか我が国は変わっていないのだと実感させられました。

それで今回は山本七平自身戦時体験の話でした。これほどの頭脳の持ち主でも、自身の軍隊経験となるとこれほど乱文になるのかと驚く内容で、後半に進むにつれてどんどん文章と要点が崩れていきます。大体の要点は上巻でまとまっているのですが、本当に許せない怒りと嘆きは後半に詰まっていました。

私達が生活している社会は空気が結論を決め、タテ社会の順序で報告が上り、建前と大義名分を元に伝令が押印され、またタテ社会の順序でルールが下る社会であることに変わりはないようで、たまたま春から始まったこの騒動の中で読んでいた為に、ついついニュースを見ていて感じるアレやコレやと同じ性質を感じながら読んでしまいました。

 

 

「瀬川ユウキ / バーナード嬢曰く。5」 を読んだ

激ヤバ鬼マスト ★★★★★

 読書マンガ。本書はずっと大好きなシリーズなのですが、誠に後者ツイートの通りですし、読み終わった瞬間にずっと積んであった「三体」を先回ししようとという気になりました。 

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
 

 いえ、読んだらめちゃくちゃ面白いに決まってると分かっているんですけど、分かっているんだけど積んでるグレッグ・イーガンみたいなもんで、分かっちゃいるんですがそこはタイミングみたいな。普段なんとなく本と本の間に読んでるエッセイ本とか読んでるぐらいならジェイムズ・P・ホーガンの「巨人たちの星」を読み終えた方が絶対に楽しいと分かっているのになんかライトな方で間を埋めちゃいます。

積み本と積み曲とか、なんなんでしょうねこれは。いつも思うんですがこれは人生の究極の無駄ですよね。まだ読んでない本やまだ聴いてない曲は自分にとってなんの楽しみにも足しにもなっていないんです。意味ないんですよ。私の家は本棚が寝室にベッドを囲む形に三面型に配置されているんですが、たまに来客があると「沢山本ありますね」という話になりますが違うんですよ、本棚に置いてあるのは全部読んでないんですよ、意味ないんですよこれ。

 

 

積み本・積み曲・定額制サービスの無限地獄

私は基本的に読み終わった本というのはBooklogというウェブ本棚サービスに書き込んで本の方は売ってしまうんですね。一棚分はマスターピース棚としてとっておいているんですが、他は絶対読み返さないだろうと言う事で売ってしまいます。でも何の為にウェブ本棚を使っているかと言うと読み終わった事を忘れて同じ本を買う事があるからなんですが、逆に言うと読んだ事も忘れて書い直すぐらいなんだから頭に入ってないとも言えます。読んでない本は意味が無いと書きましたがそれなら読んで忘れている本も意味が無いのでは無いかとも思えます。分かりません。

これは頭の悪いパナシで同じような話をしましたが、忘れた体験というのは意味があるのかと言う話で、でも人間って次々何かを忘れながら行動するものでそんな物かも知れません。

と言う訳で如何にも読書家って言う感じの本棚は全部読んでいない本です。これは毎度ながら自分でも呆れてしまいます。たまに自分でも此れ読まずに一度全部売ってしまっても人生には何の影響も無いのでは?と思えます。そういう意味ではこれはSpotifyで大量にListen Laterという名前のPlay Listで残している積み曲とも同じで或るとも言えます。

「Listen Later - アーティスト名・ジャンル名」という名前のプレイリストを作り、聴いた順からリストから外します。良いなという曲があったら単曲購入して更に良いなと言う場合は「私の激ヤバ鬼マスト」というプレイリストに保存します。厳密には聴いたことが或る曲もとりあえずぶっこんで聴いたこと或ったら聴きながら飛ばしてリストから削除してしまうのですが、要は大体積み本と同じです。

これが積み本よりタチが悪いのが定額制サービスで、幾ら増やしても気分的には無料という事です。皆様NETFLiXのマイリストとかどうされていますか?私は上記の積み本や積み曲と同じ状態なのですが、こちらに関してはもう観る事を諦めました。映像コンテンツは私の中では書籍や音楽よりも優先順位がやや低い様です。運が良かったら多分見ますよと言う扱いになっています。

積み本の方がまだマシです。私は完全主義との折り合いがついていないので、こういう所で「全部聴きたい」というTAS的世界観で物事を進めるので脳がパンクしそうになります。定額制サービスを一日中使うようになってからこの問題は更に悪化している気がします。でも楽しいんですよ、お金が減らないんですよ、充実感も凄いんですよ、でも喜びの総量がある限度を超えてしかも終わりが見えない時、ちょっと不安を覚えます。嬉しい悲鳴ですが、これは根拠の有る不安なのか、根拠は無い不安なのか区別が付きません。

 

 

定額制サービス、足りないのはお金から時間へ

高校生活・浪人生活の最中は音楽視聴はお金と知識不足との戦いでした。まず音楽の歴史本を買います。下のようなエレクトロニックミュージック・ダンスミュージックの歴史みたいな奴ですね。

テクノのススメ

テクノのススメ

 

 出てくるアーティスト名・楽曲名・ディスク名・アルバムアートワークを片っ端から覚えます。Book OFFとレコード屋へ行きます。記憶の中にある何かと引っかかる奴で出来るだけ安い奴を買います。お金がない日に定価を見つけると非常に心苦しいので出来るだけ特価コーナーを歩きます。聴きます。ハズレます。「音ゲーの曲とナンカチガウ!」以降繰り返します。行き当たりばったり過ぎて疲れます。お金も直ぐに尽きます。でもたまに人生を変える曲に出会う訳です。でもこれしか思いつかなかったんです。これでも上の世代より状況はマシです。中古はあるし、歴史本はあるし、レコ屋は試聴出来たし(試聴がない時代の日本のレコ屋では文字情報とポップに購買情報が偏りますから、日本のテクノファンは異様にレーベル名に詳しくなったなんて話も歴史本に書いてありました。)。

でも今はSpotifyがありますから本気で何かを聴きたければ検索で(例えば「Gabber」「Hardcore」と)一言検索すれば無限地獄が直ぐそこです。

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参考 Spotify Album Search "Hardcore 100"の検索結果

プレイリストで曲を聴く、好きなアーティストを見つける、アーティストプロフィールページを開く、全曲Listen Laterプレイリストにぶち込む、全部聴く、途中で素敵なREMIXを見つける、REMIXERのプロフィールへ飛ぶ、二人は同じレーベルで或る事に気がつく、Discogsでレーベル名を検索する、出てきた名前を全部Spotifyで検索する、以下繰り返す。

作業効率が良すぎます。こんな事をしていて積み曲が聴き終わる訳がないんです。足りない物はお金ではなく時間になりました。私は元から「暇だなぁ」と感じる事が余り無い性格なのですが、今はずっと「時間が足りないなぁ」としか思えないんです。「暇だなぁ」と思えないのは良い出力が出来ませんからアーティストとして何かするなら困るんですが、そこに或るから止められないんですね。辞めた方が良いと分かっているのに辞められない、これを中毒と良いますが、Spotify中毒は毒が弱いので努力して止める気にもならないから余計にタチが悪い。不安に根拠ありましたね。書いてたら気が付きました。昨日のポストと言い、自分語りってセルフ・カウンセリングじゃないかなと思えてきました。

それで、これはSpotifyが悪いということでは有りませんね。同じ状況で私はNETFLiX中毒には成りませんし、Youtube中毒にも成りません。私の性質の問題なんでしょう。なんの話でしたでしょうか、これは積み本の話でした。つまり積み本と同様積み曲は聴いていない段階では意味が無いのですが、積み本はお金を出して買っている分「買ったからには読んでみよう」と何時かは順番が回ってくるのですが(これも積みが千を超えれば怪しい気がしますが)、定額制サービスは足しても減らしてもお金の負担が変わらないので、どうするんですかこれ、皆さんどうしてますか?

 

 

iOS TB-303アプリ「JimAudio Pure Acid」が素敵

Pure Acid

Pure Acid

  • Dmitrij Pavlov
  • ミュージック
  • ¥1,840

iOS/AndroidアプリのPure Acidが良い感じです。iPadじゃなくてiPhoneでもツマミが回せるだろうかと思いましたが大きさ的に全く問題有りませんでした。1800円ぐらいする買い切りアプリです。一応Ableton Live Linkとか出来てちゃんと作曲にも活用できるのですがそんな事するぐらいだったらAudioRealism ABL3 VSTi使った方が早いので多分実作曲には使いません。お遊び用として使っています。

ですが、Pure Acidが結構面白いのがTB-303サウンドの大ヒット曲のパターンコピーがかなり良い精度で収録されている点ですね。あぁ〜このサウンドってこういうパターン入れてLFOでこう回すとこうなるのかぁ、ここ良く聴こえないけど実はオクターブスライド入ってたのねぇ、とか色々勉強になります。ABL3はもうちょっとパターン選択が瞬間的に出来るVSTiだったら良いのになと思いますが、とにもかくにもPure Acid面白いです。

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